メッセージ
2024.06.07

長期投資家の皆さまへ(2)

当社社員の集合写真

国内産業界が内包する構造的課題

なかのアセットマネジメントの2つの長期投資ファンド「なかの号」は、4月25日に出発して1か月強が経過しました。5月末付けでの第一回月次運用レポートを公開していますので、是非覗いてみてください。殊に「なかの日本成長ファンド」では、当初ポートフォリオの20銘柄をすべて開示しています。「なかの号」は透明性こそが皆さまとの相互信頼の礎と考え、これからも意欲的にそこへのチャレンジを続けてまいります。
さて前職時代からずっと、毎月長期投資家の皆さまにメッセージコラムを書き続けてまいりました。改めて、「なかの号」を通じていま想うこと、感じていることを徒然なるまま綴ってお伝えして行きたいと思います。どうかお付き合いを戴ければ幸甚です。

トヨタをはじめ国内自動車メーカーで続々と、認証不正が発覚しました。日本の基幹産業たる自動車業界あげてと言っていい集団不正は、高品質と謳われた我が国モノづくりビジネス全体の信頼性を大きく損なう、許容すべからざる事象としてメディアに大きく報道され、次々と国交省が立ち入り全容解明へと動き出しているようですが、これらは「けしからんこと」でのみ結論づけてはいけない、日本の産業界全体と行政規制の在り方全般への問題提起をすべきことでしょう。

国内製品は海外からも高品質の評価を得てきましたが、他方の見方ではグローバルスタンダードに対しての過剰品質。それ故に高コストで、価格競争力が徐々に削がれていった現実も否めず、日本製品がガラパゴスと呼ばれる一因でもあったはずです。
今般の自動車認証不正を考察すれば、現場はどこも当該認証を品質管理上不要なルールと捉えていたから、不正が言わば業界常識化してしまった。無論不正行為は企業姿勢として卑劣であることを所与として、実際不正完成車による不具合や事故などの事例が見当たらない事実と、トヨタが「安全性には問題ない」と強弁していることからも、一連の型式認証は無意味な規制が行政からの金科玉条として続けられてきた可能性への言及があるべきではないでしょうか。
自動車に限らず、国内産業界を監督する行政側が科してきている様々な規制や、企業自らの自主制約ルールのいくつかが、今や時代錯誤となった過剰統制であることを、あらゆる国内産業界と行政機関が他山の石として再考すべき機会にして欲しいと思います。

「なかの号」のクオリティ・グロース運用は、今般の事象のような事業制約の合理性にも深く洞察を傾けて、事業利益の妥当性や蓋然性を重要な評価軸に据えています。日本の産業界全体の凋落要因のひとつが過剰品質管理、そして過剰行政規制やなますを吹くが如くな企業側の過剰自主制約だとすれば、それらを是正するのは気付きがあれば容易に実行可能なことではありますが、現状維持と前例踏襲を選好しがちな日本社会のメンタリティから変えていかなければならぬことで、そこまでも含め、資本市場を担う資産運用業者が果たすべき役割の大きさを、改めて強く自覚しています。

なかのアセットマネジメント代表
中野 晴啓

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