世界的に株式市場の変動幅が大きくなって来ました。新NISAが始まってから半年余りが経ち、この間総じてマーケットは右肩上がりに推移しましたが、短期的には米国の金融政策動向に一喜一憂するような日々の値動きでした。既にこうした瞬間的な振れでも心の動揺に負けて投資から降りてしまった人たちが結構いるようですが、無論これでは将来に向けた資産形成は到底おぼつきません。そしてここまでは投資を続けて来られた長期投資初めてさん達にとっても、きっとここから最初の堪え処な局面が近いでしょう。
米国では景気減速兆候が徐々に顕在化し始めていて、市場は秋の利下げを織り込み先行きを楽観するようなムードでしたが、実体景気減速がインフレ収束を誘引するとは必ずしも言い切れず、米大統領選挙も控え米国の対露、対中、対中東への姿勢変化の先行きは地政学リスクの不確実性を高めています。おまけに短期間の株価上昇により、短期筋の利益確定エネルギーも高まっている中で、株式市場が大きく調整反応する可能性を想定しておく時期に入ったと考えています。
新NISAが脚光を浴びたことで、NISA口座から投資を始める人が激増したことは当初の成果でありましょう。とはいえ年初から駆け込むように参加した方々の大半が、ブームに便乗する如くに「NISAはオルカン・SP500でオッケー」の刷り込みによる受動的な行動動機にとどまっていて、残念ながら自らの人生を真剣に考えて、将来に向けた本気の長期資産形成に挑む気概を感じ取ることができません。恐らくは、早晩訪れるであろうマーケット全体の大きな調整局面において、こうした俄かNISA参加者たちの多くは、彼ら彼女らの想定外な市場下落に動揺を収められず、投資を止めてしまうでしょう。
私たち長期投資家はそうした多数を他山の石として、改めて新NISA制度の改革意図を制度構造から理解することが重要です。新NISA改革における最大のポイントのひとつが非課税期間無期限化です。これによって、期限を考慮することなく投資を継続出来るようになったと言えます。つまり長期投資の出口を云々考えることなく、自らの人生軸に則ってエンドレスで長期投資することがスタンダード化して行くはずです。そして将来育った資産は人生100年に鑑みて、長期投資を続けつつ段階的に計画的な取り崩しをして行く。即ち老後も長期投資を継続することで、資産を殖やしながら遣って行く、育てながら活用するという行動規範が新常識として定着して行くことでしょう。
こうした長期投資による豊かな果実を享受して行くために、これから何度も遭遇するであろう相場変動を、虚心坦懐に乗り越えて行く胆力が、長期投資家の必須条件であることを認識して、長期保有を平穏に支えてくれる心理的行動手段として、毎月積立投資を強く勧奨します。自ら納得出来る豊かな人生創りに向けて、長期投資の旅を楽しんで参りましょう!
なかのアセットマネジメント代表
中野 晴啓